44号 牡蠣と大根 (2010/2/22)
風は寒いですが、光はもう春ですね。いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
蕎麦さかいは、二人と一匹、おかげさまで元気にやっております。
今回は冬のメニューにしばしば登場した食材の中から、
牡蠣と大根について書いてみたいと思います。

牡蠣。寒い間を通して、牡蠣は本当に重宝します。
まず12月に登場するのは、北海道サロマ湖のほとり、
湧別町の芭露かき出荷組合から送られてくる殻付き牡蠣です。
1年貝と2年貝があるんですが、1年貝が滅法うまい。
柔らかくてみずみずしくて、思わず
「子供なのに食べちゃってごめんね」と言ってしまう味です。

調理法はそのまま酒蒸しにするのが一番。
単純なんですが、火の通し加減とタイミングを合わせるのが難しい。
早すぎず、お待たせしすぎず、火を通しすぎず、でも生ではなく。
鍋ごとお持ちし、パッとふたを取ると、もうもうと湯気が上がる中に山盛りの牡蠣。
ウォーッと歓声が上がる瞬間です。

このサロマ湖の殻付き牡蠣は12月だけでおしまい。湖が凍るからだそうです。
1月からは普通の牡蠣を、オーブン焼きにしたり、湯葉で巻いて豆乳仕立てにしたり。
先週は新若布で巻いて蒸してネギソースをかけてみました。

牡蠣を調理する時は大根おろしで洗いますね。
きれいになるだけでなく、味も良くなるような気がします。

大根というのは、牡蠣を洗ってあげたり、刺身のつまになったり、
おろしで焼き物に添えられたり、和え衣になったり、
自分は脇役で他人を引き立てる、ホントにえらいやつです。
でも、昆布だしで炊いて風呂吹きにして、甜麺醤で作った肉味噌をかけた一品は
大根が主役です。
これを作ると厚めにむいた大根の皮が山のようにできます。
捨てるのはもったいないのでぬか漬けに。

大根を煮る時は面取りをしますね。私はピーラーを斜めに当てて大根をくるっと回してやります。
やりながら、いつも思い出す、お気に入りのお話があります。
京都の「菊乃井」のご主人が若いころ、修業先の親父さんに、こうきいたそうです。
「大根になんで面取りするんですか。大根は煮てもとろけへんのに」
そうしたら、
「そんなおまえ、面取りせんと出して、お客さんが口切ったらどないするんや」
いい話でしょう。
だから私も、面取りしてます。


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